おっさんのポケットからスルメイカが一つ

投稿者:しんさん        2017/02/04

それは小学生の時の話

小学生の時の話。20年くらい前のことですね。

当時、電車で30分のとこにある塾に通ってたんですよ。

ある日、塾の帰りに電車が長いこと運転見合せになった時がありました。
「電車の車輪にビニールが挟まった」とかそんなしょうもない理由だったかと。

小学生だった僕は、とにかく電車が動くのを待つしか無い。

寒い季節だったので、電車の中で運転再開を待っていました。

関係ないけど当時はカセットのウォークマン(AIWA)でルナシー聴いてました。

おっさんと相席に

田舎の電車って席4つが、2x2で向かい合わせになってたりしますよね?

うちの路線の電車もそれでした。

長いこと止まってたのもあって、僕の向かいに良い具合にアルコール醸造されたおっさんが座りました。

当然、知らないおっさんと話す気など無いので、気にせず本を読んでいました。

鳴るおなか、スルメ差し出すおっさん

塾の帰りだったので、結構おなかが空く時間帯だったんですよね。

年齢×100円がおこづかいだったのでお金も無いし、田舎の駅に売店などあるわけがなく、空腹のボルテージは段々と上がって行きました。

月が上がるのと比例するかのように空腹のボルテージは高まっていき、月がおっさんと僕を照らした頃、それは静寂を切り裂くように音を奏でました。

(ぐぅー)

子供ながらに恥ずかしくて、
「なんだよ、ぐぅじゃねえよ」
と思いながら車輪に挟まったビニールを恨んだその時、おっさんと目が合いました。

「なんだぼうず、腹減ってんのか?」

減っているけれども。それは予想していませんでした。

「スルメ食うか?」

おっさんは酔っ払いだけど、良い人でした。

知らない人から貰う食べ物に抵抗はあったけど、おなかが空き過ぎて冷静な判断力など失われていました。

戸惑いながらもおっさんの差し出した乾いたバトンをこの手に受け取りました。

スルメはどこから来たのか

スルメを食べながら、おっさんは色々な話をしてくれました。

仕事のこと、働くということ、家族のこと。

なんだか結構面白い話だった気がするのですが、残念なことに細かい内容は忘れてしまいました。

話を聞きながらスルメを食べていて、ふとあることが気になりました。

普通に考えると、おっさんのポケットの中にスルメの入った袋があって、袋の中からスルメが出てくるのが通常のアルゴリズムです。

しかし、おっさんのポケットの中にはどうもプラスティックの袋のような無機物が入っている感じが無く、どうみてもスルメはオサーンのポケットにダイレクトにインしているように見えました。

しかし、それを認めてしまったら男子小学生として大切な何かを失ってしまうような気がして、僕は見ないふりをすることにしました。

見えないものを見ようとするのが千葉県民ですが、ハートに巻いた包帯を僕がゆっくりほどく訳にはいかなかった。

今でもスルメイカが歯に挟まるたびに、車輪に挟まったビニールとおっさんの四次元ポケットから出てきたスルメの事を思い出すのでした。

最後に

ポケットの中に直接食べものを入れてはいけません。

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